研究概要 |
本研究の目的は,わが国の明治期における近代歴史教育の成立・展開過程を,準備期(明治5年〜13年),成立期(明治13年〜23年),確立期(明治23年〜33年),完成期(明治33年〜45年)の4期に時期区分を行い,各時期の歴史教育関係の文献収集に基づいて,各時期の歴史授業論の構造を系統的に解明していくことである。 平成8年度の研究では,そのうちの完成期(明治33年〜45年)に焦点をあてて,完成期の歴史教育関係の文献・資料の調査・収集,文献・資料に基づく完成期の歴史教育実践と歴史授業論の分析,分析結果に基づく完成期の歴史授業論の特質の抽出とその歴史的評価,以上の3点について研究を行った。 平成8年度の研究の結果として,次の3つの知見が得られた。第1は,わが国の歴史教育独自の授業論の構築とその実践化という完成期の課題に応えるために,歴史学の成果と心理学・教育学の成果の両方を取り入れた本格的な「人物学習」が提唱され,歴史授業論として完成してきたこと。第2は,このような「人物学習」としての授業論を構築した代表的人物は,斎藤斐章や大元茂一郎などであり,その授業論は,時代の歴史発展に果たした人物の問題解決的行為を追体験する過程を通して,人物の行為の目的・意図・動機とその意味・意義を理解させるものであったこと。第3は,完成期の歴史授業論の特質は,目標論では歴史認識の内容とともに方法的能力の重視,内容構成論では人物中心の内容構成の整備,教授方法論では確立期のヘルバルト主義の形式的五段階教授法から人物の行為の共感的理解という歴史教育独自の教授方法への発展であったこと。 なお,平成6年度〜8年度の研究のまとめとして,研究成果報告書を作成した。
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