大学生3年生を対象とした第1次調査において、小学校・中学校・高等学校と学年が上がるにつれて「作文」を書く機会が減少していることが明らかになった。また、文種も小学校では「生活文」、中学校では「読書感想文」、高校では「読書感想文」および「小論文」となっていた。それらの文種が「作文」すべてであり、文章表現そのものに対しても指導の手が加えられていないと、意識している学生が多い。大学内で聞かれる学生の文章表現力の乏しさは、多くレポートや答案の文章表現や表記に関してのものが多い。 アメリカにおける作文評価は、この点において学ぶべきところが多い。すなわち、文章表現を評価するに際して、全体的・総合的評価方法と分析的・分節的評価方法とが併存し(現段階では全体的・総合的評価方法が主たる勢いを持ちつつあるが)、文章表現を分析的・分節的に把握する方法を、全体的・総合的評価方法といかに組み合わせ学校現場で普及させるかが、今後検討される必要がある。もちろん、アメリカにおいても作文の評価については、さまざまな立場と意見とがあり、一様ではないが。 大学生の多くは、このような評価方法による文章表現の指導を受けていないためと考えられ、この方面の指導はこれまで大学においては組織的になされていない。そのため「基礎ゼミ」と称して、1年生を対象とした「書くこと」の技法を中心とした授業を設定して、従来の「作文」の範疇にとらわれない「書くこと」すなわちノートやレポートのまとめ方の指導を実施して学生の「書くこと」に対する意識の向上をねらった。学生にははじめての体験のようであり、よい評価を受けた。 ただ、全般的に学生の「書くこと」に対する意識は、文章の目的や読み手を意識して書くというところまでは及んでいない。対人関係を拓く「作文」・書くことの指導のいっそうの徹底が大学においても展開される必要がある。
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