「沖縄における『国語学力』に関する研究(一) その基本問題に関する考察」(『教育方法学研究』第20巻、1994年)においては、これまでに行ってきた沖縄の言語教育史に関わる聞き書き調査を踏まえ、沖縄における「国語学力」を考えるにあたって、一「国語」への意識・対し方、と二母語の教育と「学校国語教育」の関係性、という二つの観点から、基本的考察を行った。それを踏まえ、1995年度は「生活語」に焦点を当てて、考察を進めた。 「生活語」という概念は、生活綴方運動において成立し育まれてきた概念である。が、生活に根ざした母語の文化が抑圧されてきた沖縄教育界において、この概念は、受け容れられなかった。聞き書き調査をもとに、民衆の語り=「生活語」がどのようなことばの文化をひらくかについて、具体的に考察を深めた。また、沖縄の教育界が「生活語」にどのように対してきたかについて、沖縄の民間教育団体の動向や諸論に即し、考察を進めた。さらに、沖縄と同様、母語の抑圧を受けた東北地方における「生活語」への対し方と比較することによって、沖縄の特色を明らかにするために、山形県出身の綴方教師国文一太郎の軌跡をとりあげ、考察した。 また、学校に行っていない人達への聞き書きより、近代学校で身につけることばの文化への要求がリテラシー(読み書き能力)への要求であったことが浮き彫りになった。国家の側の要求は、主に話しことばの領域における「標準語」=「国語」の浸透であり、この双方の要求の相違をどのようにとらえていくべきかについて考察を進めた。さらに、前者の側のことばの文化より、文学文化に照らし返されるべきものについて考察を深めた。
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