本年度は、昨年度に引き続き、ハイパーカード及び類似のコンセプトによってアメリカで開発された4つの教材について分析を行い、併せて、ハイパーカードを使用した社会系教科用の教材開発に着手した。 1)取り上げた教材とその分析結果…(1)リニア構造に基づく既習知識テスト教材の例として『ベルサイユ条約』を取り上げ考察した。このタイプの教材は生徒が独習で一定の知識を確実に習得できるが、ドリル的な学習になりやすい。(2)ネットワーク構造に基づくシミュレーション教材の例として『羊の角II』を取り上げ考察した。このタイプの教材はその展開が無数に開かれており、それ自体が論争的な題材を取り上げての学習に適している。ただし、実在する国家や集団などを取り上げることは、それらに対する偏見を助長するおそれがある。(3)ランダム構造をもつゲーム的学習教材兼既習知識確認拡大教材の例として『19世紀の歴史発見』を取り上げ考察した。(4)ツリー構造に基づく教科書的教材として『アンデスの世界』を取り上げ考察した。(3)と(4)から、これらはいずれも主題学習に適した教材であり課題はそれらをいかにして年間の指導計画に組み込んでいくかということであることが明らかになった。また、これらの教材は、相互に他のタイプの教材の形態で内容構成することが可能であることも明確になった。また、どちらも音声を組み込んでいるが媒体であるフロッピ-ディスクの容量による制約のため、大容量をもつ媒体による教材の開発が課題として指摘できる。 2)教材開発への取り組み…昨年度よりの研究を踏まえ、特定の内容についてハイパーカードを使用した教材を開発すべく、試作に着手しており、来年度には報告書として一定のまとめを行いたい。
|