本研究は、ハイパーカードを用いた社会科の教材開発を目的として、以下の研究成果をえた。 1.平成6年度は、アメリカでハイパーカード及び類似のコンセプトによって高等学校の生徒用に開発された2つの教材を取り上げて検討した。『地理への挑戦』は、4カテゴリーからなる3レベルの地理的な知識を、コンビネーション構造をもつゲーム的教材として組織したものであることを明らかにした。『ベトナム戦争』は、ネットワーク構造をもつ教科書的教材であることを明らかにした。 2.平成7年度は、同様に、『ベルサイユ条約』は、生徒の独習に向くリニア的構造をもつ既習知識テスト教材であることを明らかにした。『羊の角II』は、ネットワーク構造をもつシュミレーション教材であることを明らかにした。『19世紀の歴史発見』は、ランダム構造をもつゲーム的学習教材兼既習知識確認拡大教材であることを明らかにした。最後に、『アンデスの世界』は、ツリー構造をもつ教科書的教材であることを明らかにした。これらの教材は、相互に他のタイプの教材の形態で内容構成することが可能であることもあきらかになった。 3.平成8年度は、高等学校「日本史」での使用を想定した具体的な教材開発をハイパーカードを用いて行った。先行研究をふまえ、単に教科書と資料集を電子的に置き換えた教材開発ではなく、その内容からもその時代の捉え直しが可能なものにした。開発された「室町時代の人々の一日」(トライアングルコース)は、室町時代の人々の日常生活へ衣食住の3つの視角からアプローチする教材であり、ハイパーカードの特性をいかして、各種ボタンの設定によるカード相互のリンク機能、フィールドのスクロール機能、そしてカード移動時の視覚的効果をいかした教材モデルとなった。
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