本研究では、社会言語学の視点をを導入することにより、ただ単に音声や文法の形式や意味の側面を見るだけではなく、その背景にある様々な非言語的情報の分析を行い、日本語教育の方法・内容などの改善方法等についても検討を行った。話しことばの背後には、視覚情報、社会言語学的情報、異文化的情報等、様々なものがあり、それらが表層的な言語表現の意味領域に複雑にからみあっているが、本研究では、特に未分化な情報を定量的に分析、音声分析や語用論的視点からの類型化及び、データベース化を行い、同時に、教育へのフィードバックの可能性をさぐることができた。具体的な手法としては、コンピュータを利用してレーザディスクソフトの画像分析を行い日本語の表現、特に言語行動の背景にある様々な非言語情報の意味論的分析のためのシステム構築と基礎的なデータを収集し、その結果を研究成果報告書「録音録画資料による話しことばの社会言語学的考察」としてまとめた。研究方法の概要は下記の通り。 (1)コンピュータとレーザディスクの連動オーサリングシステムの設計 (2)市販ビデオソフト「会社物語」(レーザディスク)の音声の文字化 (3)同ビデオソフトのランダム・アクセスプログラムの作成 (4)同ビデオソフトの画像フレーム分析 (5)「となりのトトロ」のピッチ曲線の抽出及びデータベース化 (6)「となりのトトロ」のスクリプトの各国語への翻訳、及び、そこから得られる異文化的情報の収集 (7)研究成果報告書のとりまとめ これまでの分析では、データの量に限りがあるため、定量的な分析結果がでていない。そのため、本研究の延長上で、研究の成果の一般性を保証する量的な画像分析をおこない、今後ともデータの蓄積と分析の再検討を継続する必要がある。
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