本研究は、第二言語としての日本語の習得に伴う非言語行動の変化を観察するために、平成6〜7年度にわたって、学部進学のための日本語予備教育の初級、中級、上級の段階および、大学学部進学後ほぼ1年の時点において学習者の日本人との会話の録画資料を収集し、収集した録画資料を文字化し、さらに非言語行動(視線、うなずき、手の動き)の記述を加えた「言語・非言語テクスト」化を進めてきたものである。 分析の方法は、会話の言語部分を「実質的発話」と「あいづち的発話」に分類し、それに付随する「視線、うなずき」が日本語会話において日本人同士の場合と日本人と学習者の場合でどのように異なるか、学習者の非言語行動には言語習得につれてどのような変化が見られるか、また言語・非言語にわたる「あいづち」が会話進行上の機能をどのように担っているかなどに注目するものである。被験者の中でも主な対象者は、日本人、インドネシア人、モンゴル人学習者とした。 平成8年度以降、上記の分析を進めるために、「言語・非言語テクスト」の精度を上げる必要に迫られ、記述方法の見直しを含め改訂を何度が繰り返した。 その研究結果は、平成8年度以降は、「異文化間コミュニケーションにおける非言語伝達行動の習得に関する基礎的研究」平成8年度日本語教育助成研究発表会(日本語教育学会・文化庁・国立国語研究所、於昭和女子大学)で口頭発表を行い、また「日本語学習者の非言語行動の縦断的観察-視線・うなずきを中心として-」『The Proceedings of the 22nd Annual JALT International Conference on Language Teaching /Learning』にまとめた。 今回の報告書では、インドネシア人学習者4人に関して「視線・うなずき」行動と「実質的・あいづち的会話」の関連およびその2年間にわたる変化に注目して分析を行った。
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