連語はその性質上、習慣的、形式的なつながりが強く、学習者の記憶におうところが大きい。そのような連語を定着させる方法を開発するのがこの研究の目的である。 平成6年度はまず、初級から中級にかけて必要だと思われる、主に「名詞+動詞」からなる連語を主要日本語教科書、外国人のための日本語辞書などから約1000収集した。そして、それを日常生活、学習などの分野別にリストアップするとともに、学習者の定着をはかるために、ドリルやイラストをふんだんに利用した初・中級用の連語のテキストを作成した。 ところで、次の問題を考えてみたい。 問題 「なおす」が「なおる」になるものを選びなさい。 (1)病気を--(2)機嫌を--(3)パンクを--(4)ドルを円に-- 通常であれば、自然現象としての(1)(2)は、「なおる」ものだという認知性が働き、(3)(4)は人為的な作用による現象だという認知性が働く。しかし、言語的な区分では、直さなければならない(3)の「パンクを直す」までが、「直る」に置換され、「ドルを円に直す」は、「直る」に置換されえない。このように認知的に自然であろう区分と言語的な区分とは、往々にして、一致するものではない。極言すれば、述語の一つ一つが、それぞれ固有の振る舞いを見せると言っても過言ではない。この視点に立ったとき、ことばとことばのつながりを組織的に眺めていく必要があった。 そこで、平成7年度は、「名詞+動詞」型連語を『15万例文成句現代国語用例辞典』と『基本動詞用例辞典』から393語の基本和語動詞を中心に集め、動詞が本義として用いられる場合と連語として用いられる場合のずれを格関係の面から明らかにするために第一次資料(本義連語編)を作成した。次に、第一次資料を基に、コンピュータを駆使して、連語を《処世》《移動》などの意味別、分野別に分類し、連語のシソ-ラスの作成を試みた。その意味では、この第二次資料(意味編)は簡易版連語類語辞典でもあり、自学自習用教材支援ソフトの資料集の作成も不可欠であると考えて、これを添付することにした。
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