研究概要 |
日本語教員が教育実践の中で授業改善を行う場合,もっとも利用されるのがVTRによる内省活動または公開授業等の授業観察である。平成7年度も,北海道大学工学部田中譲教授の考案の開発ツールソフト「IntellegentPad」を活用し,以下の作業を行った。 (1)日本語教員の授業改善として刺激回想法による内観と言語報告に焦点を当てる (2)刺激回想法に用いる刺激材作成のために「IntellegentPad」の合成パッドを作成 (3)各日本語教育機関の協力のもとに,四つのアングルからの授業映像データの収集 ・教員の耳上に装着した小型CCD-VTRカメラ(1台) ・教室後部と側部と前部に設置した小型VTRカメラ(3台) (4)授業映像データを刺激材とした日本語教員の内観による言語報告を収集 (5)言語報告の文字化資料を作成 (6)改良した合成パッドに,映像データ,文字データ及び指摘ポイントをパッドに貼付指摘ポイントと内容についての共通性を検討した結果,以下のポイントが得られた。 ◯刺激材から言語報告する内容に与える影響 ◯言語報告における複数の視点からの刺激材の使用頻度と指摘ポイントとの相関 ◯言語報告に活用される複数の刺激材の主従関係 ◯言語報告に見られる日本語教員の評価に関する態度 ◯評価に際しての日本語教員の学習者の存在 そこで,日本語教員が授業改善のために内観を通じて言語報告を行うための内観ツール(「Intellegent Pad」の合成パッド)と内観マニュアルを作成して,日本語教育機関3校の協力のもと試行した。 その結果,測定・評価に対する目的意識と態度,当事者の自己認識と留意点,刺激材のとられている事物や内容,の三つが有機的に結合して測定・評価を制御することが見受けられた。逆に言えば,日本語教員の能力を考える場合,理想的な普遍的な能力があるのではなく,一つの理想的なゴールがあるのでもない。その時点で当事者のゴールの設定,それに対する測定と評価,その改善活動の三つが能力のポイントであると考えられる。
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