研究概要 |
オブジェクト指向型言語Sを基礎とする次世代のソフトウエア環境の構築をめざす本研究の初年度は,これまでの数理統計学やその計算理論を実際の問題に適用することによりその問題点を明らかにすることを第一の目的とした.まず鍵となる図書「Sと統計モデル」の完成をはかり,これに基づいて,「アクセントの同音語の弁別能力」に関して大阪方言と東京方言での違いを言語学者との共同研究によって明らかにした.また「マーケティングデータ」に関しても,これまでにない本格的なデータ解析を実務家との共同研究により行い,我々の構築しつつある環境の強力さを確かめることができた.それだけでなくこの2つの異なる分野での共同研究を通じてデータの組織化とモデル探索の支援環境としての我々の環境の様々な不備な点を発見し,それをふまえた改良を行うことができた. さらに,モデル選択の手法としてAICを直接用いるには計算が複雑になりすぎ現実的でないことが判明し,ブートストラップ法を用いることにしたが,そのためには理論面の補強が必要になった.その結果これまで提案されてきた2つの方法は少なくとも漸近的には同等であることが証明でき,さらにいくつもの同等な方法が存在することを発見した.データ数が小のときの比較は現在進行中である。 本年度のもう一つの重要なテーマは,画像解析などと密接に関係したウェーブレット変換の理論面と実際面からの検討である.誤差が含まれていたり,もともとランダム性のあるデータの場合についてはこれまでほとんど検討されていなかった.これを,定常性の観点からと従来のフーリエ解析ではカバーできなかった振幅の変化する周期の周波数推定の観点から検討し,解析に必要なソフトウエアを開発した.
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