研究概要 |
課題に関する研究の第1年度は暗中模索の結果,漸く光が少し見えてきた段階である。検定統計量の正確な分布,漸近展開に基づく近似公式の両方がわかっている一標本の場合のHotellingのT^2-検定を用い,検定のOC関数について解決方法を模索したのである。しかしこの模索段階の研究で重要なことは,本末の目的が正確な分布が未知である場合を取り扱うものであるという観点に留意して研究を進めることである。未だ決定的な具体的な公式を得るに至っていないが,初年度の研究の概要を述べよう。 検定の有意水準を5%とし,次元数をP,自由度V,非心パラメーターを△で表わし,同じパラメーターの組に対する正確なOC関数の値と近似公式の値の差の絶対値をYとするとき,Y=f(P,V,△)+ε,ε=誤差,の実用になる簡単な形の関数fを探すのである。2つのタイプのfを考えた。(1)Y=CP^αV^βexp{a(△-b)^2},(2)Y=a_0+a_1△+a_2△^2+a_3V+a_4V^2+a_5P+a_6P^2+a_7△V+a_8△P+a_9PV+ε。これに基づいて,回帰分析の考え方を適用して最小二乗法により係数をきめるわけである。点(Y_i,P_i,△_i,V_i)の選択の仕方にも回帰の時の考え方を用いた。膨大な数値実験を繰り返し,最適なものを探しているわけであるが,個々の試行においては,正確な分布が未知の場合,正確な値の情報はシミュレーションによらなければならないことを考慮すれば,用いるパラメーターの組に数は大きくすることができないことが困難を大きくする。この結果は第2年度の初めには論文にまとまる予定で,学会,研究集会で発表されるだろう。 楕円分布が母集団分布である場合のHotellingのT^2に対するBartlettタイプの修正は,漸近展開をコンパクトな形に導いたものである。この楕円型母集団の場合には,漸近展開は仮設のもとでのいわゆるnull分布に対してのみ得られている。実験計画法に関しては,計画に基づく共分散構造の特徴を生かした検定法の比較を種々論じている。
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