多母数の推定理論では従来の小母数・大標本を仮定した理論での常識は通らない。この事実を平均ピタゴラス関係の概念を用いて調べてきた。 対象としては条件付きMLEのような分離尤度を用いる方法、経験Bayes法、推定関数を用いる方法がある。分離尤度は理論的には比較的扱いやすい。経験Bayes法は全体としては分かりやすい。しかしながら、詳細にいたっては様々の困難を伴う。昨年度に発表した内容の深化に努めたが、結果はやっとドラフトの段階である。研究方法がシミュレーションに頼るところがあって結果を系統的に整理することが困難であることがその一因である。 一方推定関数の方は新たな展開を見せた。推定関数の射影を用いることによって異なったアプローチが可能になった。これは意外な展開であって表面的には同じ改良であっても、その方向が違うことを示している。従来の研究の深化を通して、次の研究の方向を示すことができた。 関連した研究としては新しくピタゴラス直交性の概念を論じた。これは従来のFisher直交性とはより少し強い、そして大変に扱い易く、特に最尤法の評価との関連で都合がよい。さらに最尤推定量の批判的再評価でも一つの結果を得ることができた。
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