Kullback-Leiblerロスはrelative entropyとして情報理論、量子力学の分野でも新しい分野を拓く道具となっている。分布の確率的構造を調べることによって、代表的な手法である1)条件付尤度法、周辺尤度法、2)経験ベイズ法、3)推定関数に基づく方法から得られる方法を見直し、新しい手法を開発することを目的とした。 1)母数間の直交性を双対性の概念を用いて定義した。この定義によって従来直観的に考えられてきたGLMの基礎づけをした。またLRTの解析的構造について新しい知見を得た。川鍋一晃氏との研究討論を通して、推定関数の理論を確率分布の構造の研究の延長にとらえることができるようになった。 2)ノンパラメトリック回帰分析と通常の回帰分析では随分と構造が違う。冷静に考えれば相似性と非相似性の両面があるはずである。この研究ではノンパラメトリック回帰分析でみられる(近似的)等号条件が見いだせる。シミュレーションではこの性質が良く観察される。その裏づけを経験ベイズ法の一般的性質として研究を進めている。 3)MLEは過剰適合を起こすという作業仮説がある。因子分析の専門家である猪原正守氏(大阪電通大)とこの仮説に基づいて、推定量のバイアス、不適合解について調べた。また別の視点から、最尤推定量が悪くなる理由を指摘した。 4)より基礎的な研究としてはKullback-Leiblerリスクの2次構造、直交座標系についての研究を行った。この面当然研究されなければならないが、その重要性が気づかれていなかった。江口真透(統数研)、山本英二(岡山理科大)両氏との共同の仕事である。
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