2次元矩形領域におけるPoisson方程式を、差分法によって離散化した際に得られる大規模連立一次方程式の新しい解法を提案し、その有効性を示した。それは、マルチグリッド法を共役勾配法の前処理として利用する方法で、実際数値計算で高速であるのみならず、前処理された係数行列の固有値分析から、その理由を立証した。とくに、拡散係数に1000〜10000程度のギャップが存在する場合では、マルチグリッド法は収束しないが、マルチグリッド前処理共役勾配法は収束し、しかもその収束までの反復回数は、メッシュを細かくしても増大しないことを示した。 さらに、この解法を移流拡散方程式に拡張した。この場合係数行列が非対称となるので、マルチグリッド前処理二乗共役勾配法となる。移流がある場合のマルチグリッド法は、粗いメッシュ上でセルペクレ数が2を越え、行列がM行列でなくなる困難があるが、粗いメッシュ上では風上差分を用いることにより、元の方程式の離散化の精度は保ちながら、安定な解法を得ることに成功した。 今後の課題としては、拡散係数に著しい異方性がある場合のPoisson方程式の問題がある。とくに異方性が10^3以上ある場合、マルチグリッド前処理共役勾配法は収束しない。また、非矩形領域への適用も今後の課題である。
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