研究概要 |
本研究では,まず,テストデータ生成問題の理論的な研究に関する枠組を作り上げ,その上で,どのようなNP型問題の,テストデータ生成が難しいのか,あるいはどのような点が難しいのかを明確にした. 主要な成果としては,タイル詰め問題TILEとよばれるNP型問題のテストデータを,ある特定の確率分布(これは一様分布に近い)μに従って、生成することが,最も本質的であることをつきとめた.より正確にいうと,もし(TILE,μ)のテストデータ生成ができれば,すべてのNP探索問題とすべての妥当な入力分布に対して,テストデータ生成をすることができることを証明した.以上の成果は論文[1]にまとめられている. こうして得られた理論的な枠組と,技術的な知見のもとに,個々のNP型問題に対するテストデータの生成手法を研究した.具体的には,代表的なNP型問題である,理論式の充足可能性問題(SAT)に対して,テストデータ生成法の原理を考え,その有効性を理論的に示した.さらに,その有効性をワークステーション上の実験により検証した.以上の成果は,現在論文にまとめている最中である. 一方,テストデータの生成手法の研究から発展して,その背景である平均時計算量の研究も行なった.その中で,NP探索問題とNP最適化問題の間に,かなりの隔たりがあることがわかってきた.しかも,その違いを,テストデータの生成の難しさの違いによって特徴つけることができた.この成果は以下の論文[2]にまとめられている. [1]O.Watanabe,Test instance generation for promised NP search problems,in Proc.9th Structure in Complexity Theory Conference,IEEE,New York,205-216(1994). [2]R.Schuler and O.Watanabe,Towards average-case analysis of NP optimization problems,in Proc.10th Structure in Complexity Theory Conference,IEEE,New York,148-161(1995).
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