今日の大規模集積化された論理回路に対するテスト生成処理の高速化は重要な研究課題である。マルチプロセッサシステムによるテスト生成の並列処理は高速化の一手法として注目されている。本研究では、組合せ論理回路モデルを対象に、テスト生成のための並列処理方式の理論的解析ならびに実際の並列処理システムの構築による実験による性能評価を行った。 論理回路に対するマルチプロセッサシステムによる故障並列法を用いたテスト生成の並列処理では、プロセッサ間の通信方式として、生成したテストベクトルを通信するベクトルブロードキャスト方式と、検出した故障を通信する故障ブロードキャスト方式が考えられる。これらの二つの通信方式を用いたテスト生成の並列処理について、モデルの設定、テスト生成、故障シミュレーション、プロセッサ間の通信に要する費用およびスピードアップ率が理論的に解析した。 つづいて、この理論的解析の正当性を確かめるために、二つの通信方式をワークステーションネットワーク上に実現し、実験結果と解析結果との比較及び種々の性能評価を行った。実験では、それぞれのブロードキャスト方式について、プロセッサ数、通信終了係数、通信周期を変化させて、生成されるテストベクトル数、単一プロセッサシステムに対するスピードアップ率、通信費用を測定した。その結果は、1)通信終了係数が増加すると生成されるテストベクトル数は減少する。2)生成されるテストベクトル数が最小となる通信周期が存在する。3)故障ブロードキャスト方式はベクトルブロードキャスト方式より高いスピードアップ率を得ることができる。4)通信費用は、故障ブロードキャスト方式ではテスト生成が進むにつれて減少し、ベクトルブロードキャスト方式では一定となる。5)通信方式をベクトルブロードキャスト方式から故障ブロードキャスト方式に切り替えることによって最小の通信費用の存在を確かめた。これらの実験結果は、解析結果とほぼ一致した。
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