従来の医療診断エキスパートシステムは、主として知識と推論が表層的であるという問題のために実用化が困難であった。この問題点を解決するために、"深い"知識・推論の導入が試みられてきたが、現在でもなお医学的な知識を詳細に表現できていない。このため、医師の管理しているデータベースから自動的に知識を抽出するための手法が機械学習の分野において研究されてきている。しかしながら、これらの手法が適用されているデータは無矛盾性が暗に仮定されており、確率的な知識を得ることは困難であった。本課題研究において、我々は平成6年度にデータベースの中に含まれている知識を抽出するrough集合理論を確率的知識が扱えるように拡張し、それに基づいてデータベースから鑑別診断ルールを獲得するシステムPRIMEROSE (Probabilistic Rule Induction Method based on Rough Set theory)を開発し、次いで平成7年度にこのシステムをベースとして、三種類の診断知識を系統的に自動獲得するシステムPRIMEROS-REX (Probablistic Rule Induction Method based on Rough Sets and Resampling Methods for Expert System)を開発した。これらのシステム開発後、実際の症例データベースによってこの性能を検討すると同時に、確信度の推定に関して、リサンプリング法を用い、推定手法のなかである問題領域で、どのようなものが最適化についてもあわせて検討した。結果として、当手法がきわめて効率的に三種類の診断規則を導出させることに成功した。しかしながら、問題領域によっては、これらの手法の中での最適な手法を決めることが困難である場合も存在した。
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