研究概要 |
科学史や技術史の上に現われている多くの創造的な業績というものは,意外なくらいに,単純な思考パターンによってそのアイデアがまとまっており,類似を手がかりにする発想やアナロジー等を媒介として,数多くの重要な発見や発明が成し遂げられている.しかし正確には,発明の元になったものをそのまま写像するのではなく,創造的思考独自の内容の付与や内容の質的変換が行なわれている.このような考察により生まれたのが市川亀久彌による等価変換理論であり,人が物事を創造する過程を理論化している. その理論を元にして,本年度の研究では,意味ネットワークで表現された事象により,発明の過程を計算機上でモデル化し,対象となる事象と,解決の手がかりを与える事象を組合せ,既存の発明品を再発明するシステムを試作した.その際,一般的なルールとその適用範囲を制御する概念データの2つに因果関係を分解し,写像を行う手法を提案した.一般的なルールを適用する際にユーザーに修正を促し,概念データを書き換えていくことでその適用範囲を洗練させていくのである.これにより背景知識を用意せず,2つの事象の記述だけでお互いを組み合わせることができた.さらに,理論と今回構築したモデルとを比較し,使用できなかった発明例についてその原因を確かめ,検討を行った.
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