記号を空間表現するのは、記号間の類似性や相互関係を視覚に訴えて理解しやすくするためである。従来の方法は一方向的であり、何等かの類似性データに基づいて空間配置を求めるに留まっている。これに対し本研究は、単に単語間の関係に基づいて空間配置を行うのみならず、ユーザの考えを反映して空間配置から単語間の関係を修正するという双方向的アプローチを提案する。これをここでは双方向的空間配置と呼ぶ。このアプローチを文献およびキーワードの空間配置という課題に適用する。 ここではまず数量化理論3類を用いて単語の最適空間配置を行う。続いてニューラルネットワークの学習により修正後の空間配置から単語間の関係を求めるという逆最適化問題を解くことを提案する。具体的には修正後の空間配置を入力および出力目標値として与え、結合重みを学習することにより、修正後の空間配置を最適配置とする反応行列を求める。 ただし通常のニューラルネットワーク学習とは以下の点で異なる。第一に、通常の出力自乗誤差の代わりに、出力ベクトルと出力目標ベクトルの成す角の余弦の最大化という新たな評価を用いる。第二に、層間の結合重み行列間の非線形制約および、各要素の非負制約を満たしながら学習する必要がある。 ここでは10個の文献と40個のキーワード間の関係に基づいて数量化理論3類により文献およびキーワードを空間的に配置した。ユーザの空間配置変更の例として、3個の同義語キーワードが同じ場所を占めるという最も単純な修正を加える。この修正後の空間配置を最適配置とするよう逆最適化問題を解くことができた。
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