研究概要 |
平成6年度に行った研究によって得られた成果を,本研究の2本の柱である「相互排除問題」と「安定結婚問題」に分けて示す。 1.相互排除問題 (1)複数種類資源のための相互排除プロトコルを設計,開発した。開発した手法は,単数種類・複数個の共有資源,複数種類・単数個の共有資源に適用可能である。また,ペトリネットのサブクラスであるマークグラフを用いて開発プロトコルをモデル化し,その正当性を示した。 (2)開発したプロトコルの性質を理論的に解析し,システム全体の発火並列度の上限を求めることによってプルトコルが正しく動作するためのシステムの条件を求めた。 分散相互排除プルトコルを開発し,その正当性をペトリネットを用いて示す等,理論的解析においては成果があったが,応用面での解析が十分でない。平成7年度は,さらに自律分散協調ロボット環境に適用したときの問題点を整理し,応用面の考察を深めたい。 2.安定結婚問題 (1)男女平等安定解を定義し,その数学的性質を調べた。その結果,男女平等安定解を求める問題は,ある一つのグラフ問題(有向グラフの閉部分集合和問題)に帰着できることが分かった。 (2)閉部分集合和問題がNP困難な問題であることを示した。 (3)遺伝的アルゴリズムを用いて効率良く男女平等安定解を求める手法を開発した。 (4)分散安定結婚問題を定義し,それを解くGale-Shapley基本解を示した。 安定結婚問題を自律分散ロボット環境に応用する場合に考慮しなければならない男女平等性について数学的に考察し,男女平等安定解を効率良く求める手法を開発したが,それは分散アルゴリズムではない。平成7年度の重要な課題の一つは男女平等安定結婚問題を解く分散アルゴリズムを開発することである。
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