研究概要 |
平成7年度に行った研究によって得られた成果を,本研究の2本の柱である「相互排除問題」と「安定結婚問題」に分けて示す。 1.相互排除問題 平成6年度に行った研究によって,複数種類資源のための相互排除プロトコルを設計,開発した。開発した手法は,単数種類・複数個の共有資源,複数種類・単数個の共有資源に適用可能である。また,開発したプロトコルの性質を理論的に解析し,システム全体の発火並列度の上限を求めることによってプロトコルが正しく動作するためのシステムの条件を求めた。この条件を用いると,プロトコルが正しく動作するためのシステムの初期設定が可能である。この初期設定問題をグラフ論的に表現すると,与えられた無向グラフに対して,ある条件を満足するように各枝に方向づけを行い,初期有向グラフを設計せよ,となる。 平成7年度は,そのような初期有向グラフを設計するための手法を開発した。開発した手法は,2つのステップからなる。最初のステップでは,与えられた無向グラフから正準な閉路カバーを求めるが、それはNP困難ということが分かっているため,遺伝的アルゴリズムを用いて効率良く求めている。2番目のステップでは,ステップ1で得られた有向グラフから,フィードバック・エッジ集合を求める。一般に与えられた有向グラフのフィードバック・エッジ集合を求める問題は,NP困難であるが,ステップ1で得られた有向グラフに対しては,多項式時間アルゴリズムが存在することを示した。 2.安定結婚問題 分散安定結婚問題を定義し,それを解く分散Gale-Shapleyプロトコルを示した。また,離婚プロセスという概念を導入し,パートナーを変更するメカニズムを開発した。これにより,一度パートナーを得ても,(もしそのパートナーに不満があれば,離婚プロセスを起動することにより,より良いパートナーを見つけることができる。ただし,離婚プロセスは必ずしも成功するとは限らない。そこで,離婚プロセスが成功するための条件を離婚プロセスが唯一つの場合と複数存在する場合に分け定理として示した。 また分散安定結婚問題の応用例として,自律分散ロボットのグループと充電ステーションのグループとのマッチングを示した。
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