オートマタ・システムを構成する要素と全体の動作との関係を特にその自己組織化能力、学習能力という側面から解析・評価する方式を確立し、オートマタ・システムの動作の本質的理解を深めることが本研究の目的である。 オートマタ・システムの階層的解析として、まず素子の複雑さの階層性に焦点をあてて研究を進めた。論理関数の次数を定めることが第一段階として必要である。そこで論理関数を各変数で展開し(シャノン展開)変数の数が少ない関数の次数から再帰的に次数を決めてゆこうとした。論理関数の間に同族性の概念を導入することによって、基本的な関係を得ることが出来た。但し、同族性そのものについて完全な再帰的関係が得られていないので、新たに2変数の排他的論理和による展開法を提案し、次数が計算できる場合を増やすことが出来た。変数による展開と排他的論理和による展開によって、論理関数の次数は決定できるのではないかと予想している。 次数1のしきい値論理回路網の非同期動作における安定性評価については、素子のタイプを興奮型と抑制型に分けてネットワークを構成することによって、その周期構造を解析し予備的結果を得た。これはホップフィールドが与えた対称結合の条件を拡張する試みの一つである。 さらにシステムの動作に関しては、状態が非負整数値を取る階段論理関数からなるネットワークを考え、結合係数が対称であるとき同期動作するシステムにリヤプノフ関数が存在することを示し、高々周期2のサイクルしか存在しないことを証明した。さらにある種の平衡状態パターンが持つ構造的特徴を結合係数との関係で明らかにした。このような解析は、連想記憶の学習過程を構成する基礎となるものである。
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