本研究は、経営システムが情報技術の導入によって獲得する問題解決能力を解明することにある。このため、組織知能工学的な立場から、経営システムにおける情報技術実施に関する自己生成的連鎖モデルを構築し、シミュレーションを行い、組織知能に関して考察した。このモデルでは、組織知能を組織の問題解決能力であると考え、組織の意思決定主体間で生じているさまざまな相互作用を、行動-反応の連鎖としてモデル化している。 実態調査の結果にモデルの適用を試みたところ、この連鎖は、ある相互作用系に関して、多重に存在していることが判明した。この結果、主要な連鎖以外の連鎖は、潜在的な連鎖として存在していることとなり、組織の問題解決能力の中に、いわば畳み込まれているもので、その基盤を形成するものであると考えられる。従って、このモデルを用いることによって、組織における情報技術の導入は、ある連鎖を強化したり、混乱させたり、崩壊に導いたりするというように記述できることが分かった。 さらに、情報技術の導入による組織や社会の問題解決能力の高度化は、組織知能や社会知能の高度化であると考え、社会情報システム論にもとづく議論の必要性を提唱した。このため、社会情報システム論を社会システム論、情報システム論、社会情報の意味論の交差領域に成立する理論として位置づけるとともに、自己生成(Auto-Genesis)の概念に基づく相互学習の基礎的なモデルや組織構造の設計や変動に関する考察を行った。
|