研究概要 |
数理計画問題は、問題を記述している集合や関数によって、凸計画問題と非凸計画問題に大きく分類できる。凸計画問題はその扱いやすい性質のゆえにこれまで多くの研究者が研究対象とし、線形計画問題に代表されるように、高度な理論が構築され、実用的な算法が提案され広く普及している。しかし、非凸計画問題に対しては、その問題の難しさゆえに研究者も少なく、基礎的な研究も十分とは言えない。 本研究では、凸集合から幾つかの凸集合を取り除いてできる集合 reverse convex set を実行可能領域を持つ最適化問題を非凸計画問題の標準問題と位置付け、それに対する算法の研究を行った。高次元空間での最大空円問題、真円度問題などがこの問題に定式化できる典型である。従来この問題に対しては、Kuno-Konno-Yamamoto,Kuno-Yajima-Yamamoto-Konno,Thach-Burkard-Oettli,Pferschy-Tuy 達によってある種の近似解を与える算法が提案されていたに過ぎない。しかし、本研究では有限時間で正確な最適解を与える算法を提案した。この種の非凸計画問題に対する算法としては有限性と最適性を合わせ持った初めての算法であろう。問題を発生させて既存の方法と提案した方法の両方法で解くことによって計算効率の比較も行った。その結果、計算時間で測定して Pferschy-Tuy の方法の2倍ないし3倍の速度を持つことが示された。 また、真円度問題などの問題を分数計画問題に定式化して算法を提案しているほか、変分不等式問題に対して従来の単体的算法を改良した連続変形法を提案し、従来の方法との比較実験を行った。 また、古典的な難問である巡回セールスマン問題に対する入門書を完成させた。本書は巡回セールスマン問題を通じて組み合わせ最適化の困難さと面白さを紹介するのが目的である。
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