従来の生産システムでは、所与の目的を達成すべく計画、設計、構築された後、運用において当初予定した条件と異なる条件下で運転、制御されることが多い。この場合、各設備の操作条件を上部機構からの命令によって決定する方法がとられる。自律分散型生産システムでは、このような階層構造の存在を前提とせず、システム自体が自律的に、状況を判断して、システムの目的が達成されるように、操作条件を変えたり、システム構造を変えることができることが必要である。ここでは、装置工業における多目的化学プラントを対象に自律分散型生産システムの実現に関する研究を行った。 自律分散型生産システムの実現可能条件は、個の均質性、自律的な状況適応性、及び個の結合に関しての自己組織性を必要とする。個間の相互作用は初期システム構造として与えられ、システム外部の変化に適用しながら自己組織化される必要がある。化学プラントでは、混合、反応、分離等の機能別の単位操作機器を使用しているが、均質性の条件をみたすために多目的モジュールを構造単位とし、これらの結合によって異なる機能を実現することとした。これにより、機能別ブロックが複数のモジュールから構成されることになる。機能別ブロックが全体システムの状況を判断(siutation awareness)し、状況適応行動(situated actions)がとれるためには、システム目的の共有化、他ブロックの状況把握が重要であり、システム内、外部の変化を局所化する方策を戦略的な行動ルールとして採用した。この結果、機能別ブロック内蔵のセンサー値によって、ブロック内の最終モジュールの操作条件を許容最大値までの範囲で変更し、上限に達したとき予備のモジュールを結合することによって、自律分散型生産システムが実現可能になることが明らかになった。具体的には、システム運用に対する変動に対して、それぞれ下記の対応が可能である。 ・システム入力変化:上流側要素による変動吸収、局所化 ・システム出力変化:下流側要素による変動吸収、局所化 ・システム内部要素の変化:当該要素の置き換えによる局所化 なお、初期条件として最適運転条件が与えられ、上記の変動によって最適条件から偏奇した条件で運転されることになるが、経済性に関しては、条件変更などに対応できる限界を広げるため、投資許容額の上限まで投資を行い、後は稼働率を上げて投資が無駄にならないようにすることが現実的な解となる。運転時においては、ユ-ティリティ使用量を減らし、全体として許容範囲内でモジュール使用量を最大化することが最適な方策である。
|