本研究は議員定数配分方法に関する公平性、平等性、不偏性、整合性等の問題を数理的に扱いつつ、わが国にとってどのような選挙制度が望ましいかを探ることを目的とする。平成6年度においては、まず米、仏、独を中心とする諸外国における選挙制度の歴史的変遷の推移の概要と問題点を整理し、これらの比較、検討を行った。次に議員定数配分問題を数理計画理論における離散的最適化問題として定式化し、最適化問題の解法を実際にプログラム化した。これらの定数配分方法によって得られた配分について、全域的最適化問題の最適解としての解釈を与え、「公正」という側面からの評価基準を詳細に検討した。各配分方法による定数配分の特性について、特に選挙区の大小に関わる"有利性"の問題を中心に比較分析を行った。さらに配分解の特性としての総議員数特性、安定性、整合性等について検討した。 小選挙区制と比例代表制の数理的側面に注目し、それぞれの制度の特徴と問題点について分析を行った。これらの選挙制度を「公正」、「平等」の観点から眺めた数理的な分析を行った。現在は、これまでの代表的な議員定数配分方法をプログラム化し、実際のわが国の衆議院、参議院選挙区データを用いて、わが国の衆議院において採用されつつある小選挙区比例代表並立制を中心として、定数配分値を試算中である。小選挙区比例代表並立制の特徴、問題点を詳細に分析することによって、わが国の衆議院が将来採用すべき選挙制度の理想像を明確にできるものと期待される。また議員定数配分方法の有する特性と選挙制度としての実施可能性等についても何らかの新たな知見が得られるものと期待される。
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