本研究では、消費者の品質要求に関する調査を効果的・効率的に行うための基礎知識を得ることをねらいとして、様々な消費者の様々な製品に対する品質要求の間に結果としてどのような共通性が存在するのか実証的に明らかにすることを試みた。消費者の要求品質に影響する主な要因としては、1)製品の違い、2)要求する人の違い、3)製品と人との拘り方の違い、の3つが考えられる。まず第一に、2)と3)を大学生と使用者に固定した上で、1)が品質要求に与える影響を明らかにすることを試みた。120製品をその使用形態や所有形態の違いによって分類した上で、代表的な5つの製品を選定し、これらに対する155人の大学生の要求について調査を実施し、得られた結果の共通性・相違点について検討した。結果として、使用形態や所有形態の異なる製品であっても、要求されている品質項目は共通であること、品質項目のどれを重視するかは製品によって大きくことなるものの、評価の視点は共通していることなどが分かった。次に、2)に着目し、5製品、20品質項目について、3)を使用者に固定した上で、5段階評価による調査を行い、年齢、職業、性格等の10消費者属性について重視する品質項目に層間でどのような違いがあるか比較・検討した。結果として、重要度評価に対する人及び製品の影響は、対象とする消費者の属性や製品の種類によって異なり、共通の結果が得られる消費者群及び製品群が存在することが分かった。最後に、3)について、a)贈り物として購入する場合、b)個人用に購入する場合、c)仕事用として購入する場合の3つの立場によって、重視する品質項目がどのように変化するか9製品を対象に調査を行った。結果として、家庭用品や非日用品については、携帯品や日用品に比べて、重視する品質項目が購入時の状況によって大きく変わること、製品品質を評価する視点については、重視する品質項目に比べて、3つの購入状況による違いが小さいこと、この結果は製品の種類によらず成り立つことなどが分かった。
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