わが国の機械製造工場で、製造工程、生産管理、設計、資材購入過程などへコンピュータ技術が導入された影響を検討するために、労働の編成や労働内容の変化、労働負担の変容、職業性のストレスの詳細を検討した。従業員からの聞き取りと文献検討による理論的考察を行った。初年度のには文献検討と聞き取り予備調査を行い、聞き取り調査の枠組みを決定した。二年度目には従業員6名からの詳細な聞き取りと集団聞き取りを実施した。その結果は次に通りである。 [1]この技術的変化は、製造工程、生産管理、設計、資材購入、ソフトウェア開発などの広い領域に及び、労働における人間の熟練や仕事の難易度の低下と工数の減少をもたらし、人間の能力の制約を緩和する役割を持ち、作業の効率化に寄与している事実を確認した。わせてCIM工場革命というにふさわしい意義を持つと考察した。 [2]従来の労働組織における定型的なルチン作業と意志決定などの複雑作業とを分ける境界線が変化した。一方では従来の複雑作業の多くが定型作業になり、他方では意志決定などの作業の責任が重くなった。 [3]労働負担が大幅に軽減されうる可能性が生じたが、現代的労働負担が新たに生じる危険性が見られること、労働組織の再編成に伴い多彩な産業ストレスが生じる危険性が見られることを指摘した。中高年齢者がこの技術革新に適応し、新しい能力を習得する過程に対して有効な援助がおこなわれることが求められている、と結論づけた。
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