従来の自己組織化の理論は散逸項が無い場合の系が持つ不変量に基礎を置くために、理論的に導かれる自己組織化した状態が散逸項や散逸パラメータに依存しないという欠点を持っていた。研究代表者の近藤による新しい自己組織化の一般理論は、力学系の分布が散逸力学オペレータの随伴固有関数によりスペクトル展開され、非線形項によるスペクトル遷移とスペクトル上での高モード側の選択的散逸によって最小固有モードが自己組織化した状態として現れる事を導いている。この新しい理論を検証するために3次元MHDプラズマのシミュレーションを行い、散逸力学オペレータの随伴固有関数によるスペクトル解析を行った。その結果、自己組織化機構として重要な次の三つの基礎物理過程を明らかにした。1.不安定性の成長過程では非線形モード結合により2つのモードの和と差の形で高低両モード側へのスペクトル遷移が次々に起こる。低モード側には下限があるために最小固有値モードへのエネルギーの堆積が起こり、上限の無い高モード側では無数のスペクトルへの分散が起こる。2.これと並行して、散逸力学オペレータの性質から高い固有値モードのスペクトル成分ほど速く散逸するために、このスペクトル上での選択的散逸が起こり、自己組織化のアトラクターとして最小固有値のモードが最後に残る。3.散逸緩和の最終段階の平衡状態に近づくと非線形項よりも散逸項の値が相対的に大きくなり、支配的力学オペレータの交代が起こる。この結果、自己組織化した状態は散逸力学オペレータに支配された分布を持つ。これらの研究結果は論文にして投稿中である。
|