研究概要 |
プラズマは本来A【tautomer】A^++eという化学反応系である。従来のプラズマ物理学は、たとえ弱電離プラズマであっても、完全に電離したプラズマとして記述され、反応系としての視点は取られていない。これまでにプラズマとしての性質のかなりの部分を説明できたという幸運な事実は存在するが、非線形媒質としてのプラズマを研究の対象とする場合、反応項による非線形性は本来無視できない。本研究の目的は、新しいプラズマの見かたとして化学反応系の視点を導入し、興奮媒質に代表される非線形プラズマ物理学とプラズマ物理学の接点を開拓するものである。 実験は2.45GHz、5kWの円偏波マイクロ波を用い,プラズマ中に電子サイクロトロン波を励起して行った。この方法は通常高密度プラズマ生成に用いられるが、本実験では、運転条件を通常とは異なる領域に設定して行った。これまでに観測されたことは、プラズマへの入力が一定にも関わらず、プラズマ密度が高密度と低密度で遷移(分岐)することや、2つの状態間で自励振動を起こすこと、またそのような領域では波動吸収の異常性が見られることなどが明らかになった。また、プラズマの流れ場を実験的に求めるため、方向性プローブを用いてイオン飽和電流から流れ速度を求め、その二次元構造を決定した。その結果、これまでに見つかっていた密度分岐現象は、流れ場の構造がはき出し型の渦から吸い込み型の渦へと構造変化することに対応していることがわかった。従って、プラズマ中の密度分岐現象は、化学反応系としての興奮媒質の振る舞いに酷似しいるが、同時にプラズマ中の流れ場の構造変化と共存していることが明らかになった。即ち、プラズマは荷電粒子系の集団運動と反応系としての分岐現象を共存させ得る媒質であると結論できる。これまでの成果は、2回の学会(合計3件)において4発表した。
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