バッチ式における純水の回収挙動は、まず溶液が薄膜式蒸発缶に供給されると遅い蒸発速度で蒸発する。ついで、薄膜が缶上部に達すると、与条件下では最大の速度を示し、この速度は温度、真空度、溶液供給速度および翼回転速度に強く影響される。液の供給が停止すると薄膜の高さも減少し、蒸発速度も減少する。従って、バッチ式濃縮実験のばあいには全体として蒸発量の時間変化はシグモイド形を示した。本研究では飛沫同伴によるテクネチウムの移動を防ぐため、翼回転速度600rpm、液供給速度13ml/minおよび真空度15mmHgの条件下で、^<95m>Tcのtracer濃度(約10^<-12>M)の廃液を30℃で薄膜式蒸発缶で処理したが、回収率が約98%であった。このときの蒸発して回収された蒸発液中の^<95m>Tc放射能濃度は測定出来なかった。濃縮液中の2%のテクネチウムの損失の原因を調べる為テクネチウムと物理的化学的性質が類似しているレニウムを用いて蒸発挙動をしらべた。模擬廃液濃度100ppmのレニウム溶液500mlを薄膜式蒸発法で処理し、濃縮液中のレニウム濃度をICPAES(誘導結合発光分光計)で調べたところによると、2000ppmであった。蒸溜液中のレニウム濃度をICP-MASS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で定量したところ、2ppbのレニウムが検出された。濃縮液中のレニウム濃度と蒸溜液中のレニウム濃度とから、除染係数として約10^6の値を得た。これらの結果はレニウムが極少量ながら揮発することを意味する。
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