使用済核燃料の再処理施設で発生する低レベルであるが排水濃度規制に抵触するアクチノイドおよびテクネチウム(Tc)を含む放射性廃液を、薄膜式蒸発法で濃縮してから主工程に戻すまたは処分することを構想し、その結果として放射性廃液の発生量を大幅に減少させるのが目的である。蒸発法は減容比が非常に大きいため有効な手段であるが、Tcは揮発し易い元素であるため従来の濃縮法を利用するのが困難である。水を用いた薄膜式蒸留法の濃縮実験で以下のような結果を得た;温度:50℃、翼回転速度:600rpm、水供給速度:13ml/min、真空度:15mm Hg。これらの条件下では蒸留器の連続運転が可能である。得られた最適条件下でトレーサレベルのテクネチウム溶液のバッチ式濃縮実験を行い、濃縮液中に98%の回収率を得た。蒸留液中のテクネチウム濃度は測定限界以下であった。2%のTcの所在を検討するため、Tcと物理化学的性質が類似しているレニウム(Re)水溶液(100x10^<-6>g/ml、500ml)の濃縮実験を行った。蒸留液中のRe濃度(2x10^<-9>g/ml)を誘導結合質量分析装置(ICPMASS)で分析し、また濃縮液中のRe濃度(2000x10^<-6>g/ml)を誘導結合発光分析装置(ICPAES)で分析した。分析値から計算したReの回収率は98%であり、Tcを用いた濃縮実験の結果と一致した。また、蒸留液および供給液のRe濃度からReの除染係数を求め5x10^4の値をえた。蒸留液中のRe濃度を更に検討することが必要である。さらに硝酸ナトリウムなどの塩が共存する場合や少量のドデカンなどの有機溶媒が共存する場合の濃縮挙動を明らかにする必要がある。
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