研究概要 |
材料素性の明瞭な12mmφ×100μmのSi-SSD素子を照射試料にして,中性子照射効果とその感受性について調べた。逆バイアス状態でのインピーダンス測定より,Si-SSDの電気的特性は,空乏層領域に対する高抵抗R,静電容量C,そして,n型Si結晶バルクに対する低抵抗rで表わされることがわかった。そして,中性子照射によってRは減少し,rは増加し,Cが低周波数領域では増加し,高周波数領域では減少した。このインピーダンス変化はコール・コールの円弧則を満足せず,有極性液体の電気的特性の傾向を示した。つまり,配向分極によってある周波数領域の交流電場で異常分散及び吸収を引き起こしている。そして,分極が起こっているとすると,中性子照射によって生成された欠陥が集合して分極を生じさせるような構造に変化していることが考えられる。さらに詳しい測定が必要である。また,漏れ電流が中性子フルエンスに比例して増加した。DT及びDD中性子による漏れ電流増加率はそれぞれ単位体積当たり3〜4×10^<-7>nA/cm,1〜2×10^<-7>nA/cmであった。また、Si-SSD素子の漏れ電流増加に関するDT-DD中性子損傷相関係数は2.2〜2.4であった。Si-SSD素子試料の中性子応答電荷スペクトルデータをもとに,荷電粒子輸送コードTRIM-90で計算した原子弾き出しについての損傷相関係数は2.3〜2.5ととなり,実験値とほぼ一致することがわかった。このことは、Si-SSD素子の中性子損傷(漏れ電流の増加)が原子の弾き出し効果に強く関係し、またエネルギーの異なる中性子による損傷についても原子の弾き出しの計算によって損傷の予測や評価ができることを意味している。また、この結果は、同様の原理に基づく他のSi半導体素子の核融合中性子損傷の推定や評価にも十分適用できると考えられる。
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