研究概要 |
n型Si半導体をベースにしたSi-SSD素子の中性子照射効果について詳しく調べた。Si-SSDの照射実験において漏れ電流が中性子フルエンスに比例して増加し,漏れ電流増加に関するDT-DD中性子損傷相関係数は2.3であった。Si-SSDの中性子応答電荷スペクトルのデータをもとに荷電粒子輸送コードTRIMより計算した原子弾き出しについての損傷相関係数は2.5となり,漏れ電流増加に関する実験値とほぼ一致することがわかった。このことは,Si-SSDの中性子損傷(漏れ電流の増加)が原子の弾き出し効果に強く関係し,またエネルギーの異なる中性子による損傷についても原子の弾き出しの計算によって損傷の予測や評価ができることを意味している。 さらに,CMOS-SRAM型記憶集積回路素子の14MeV中性子誘起ソフトエラー断面積の評価を行った。1Mビット記憶素子の実測14MeV中性子誘起ビットソフトエラー断面積は6〜9×10^<-14>cm^2であったが,この値は,記憶セル部分中にソフトエラーの発生に決定的な領域があることを示している。理論的な考察から決定領域としてMOSトランジスタのドレイン下部の空乏層領域を考え,開発したモンテカルロシミュレーションコードで,ビットソフトエラー断面積を計算した。測定値との比較考察から,ソフトエラーの発生にSi(n,α)Mg反応の寄与が最も大きく,14MeV中性子誘起ソフトエラー断面積の値をほぼシミュレーション計算で再現でき,ソフトエラー発生に関する決定領域の考え方が妥当であることを明らかにした。
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