本研究は、九州大学タンデム加速器からの重陽子ビームを使用した中性子源から得られる5〜20MeVの偏極中性子ビームを用いて、中性子反応断面積の精密測定を行うことを目的としている。平成6年度は、主要検出器(位置検出型比例ドリフト計数管システム)の製作、及びデータ収集系の開発を中心に研究を進め、実際にタンデム加速器からのビームを用いてテスト実験を行った。 主要検出器として、これまでに開発してきた、バックギャモン読み出し法と電子ドリフト時間測定法を組み合わせた位置検出型比例計数管に関する経験をもとにして、新たに二連の読み出し面を有する透過型の荷電粒子検出器を製作し飛跡(角度)検出が可能な構造とした。更に、全エネルギー検出器として大面積半導体検出器を取り付け、中性子反応から放出される荷電粒子を高い効率で検出するシステムを実現した。 信号処理及びデータ収集系については、多チャンネルの波高分析器(CAMAC)を購入し、パソコンを用いた専用のシステムを構築した。その際、データ収集用とは別にデータ解析用のパソコンを用意して両者をメモリー共有システムで結合することにより、データ収集の速度に影響を与えることなくオンラインでデータの解析が可能な仕様とした。データ解析用のソフトは、今回の目的に沿った様々解析ができる様に自作し、データ収集中のモニターとしての機能もつけ加えた。 こうして構築したシステムは、放射性同位元素から放出されるβ線やエックス線を用いてその基礎特性を測定した。その後、検出器システム一式を九州大学タンデム加速器実験室に持ち込んで、中性子をポリエチレンターゲットに入射した際に放出される陽子を用いてテスト実験を行い、実用性・位置検出特性を調査した。この際、ガス計数管からの信号と半導体検出器からの信号の同時計数を行い、バックグランド除去効果の有効性を確認した。
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