事故などで環境中に放出されたトリチウムガスは主として土壌細菌により酸化されてトリチウム水となって生体に取り込まれ生物影響を及ぼす。トリチウム水は吸収され易いため、その大気中濃度値はトリチウムガスの1/25、000に定められている。従って、トリチウムガスの環境での酸化変換機構の解明は環境影響評価・安全性確保の観点から必要とされる。本研究では、環境での酸化は土壌細菌によるとされているが、植物に付着する細菌ではどうであるか、土壌のトリチウムガス酸化はトリチウム酸化能をもつ土壌細菌の存在で説明されるか、そのような土壌細菌の実体はなにかなどについて研究を行い、以下のような成果を挙げることができた。 1.苔と松の細根および松周辺表層土壌から得たトリチウムガス酸化能をもつ放射菌分離菌8株について、それらの属を形態的特徴と各種細胞成分の分析に基づく化学分類法により、5株がStreptomyces、2株がNocardia、1株がRodococcusと同定した。 2.トリチウムガス酸化菌を栄養条件の異なる3種の培地をもちいて分離し、それらの土壌での分布の実態、とそれらが土壌のトリチウムガス酸化能を説明しうる存在であることを、カナダチョクリバー研究所の実験場の土壌を用いて研究し明らかにした。トリチウムガス酸化空中菌も分離し、その内4株について形態的特徴と各種細胞成分の分析に基づく化学分類法により、いずれもStreptomyces属であると同定した。 3.実験場の土壌から得られたトリチウムガス酸化能を持つ放射菌分離株9株について、それらの属を形態的特徴と各種細胞成分の分析による化分類法により7株がStreptomycesと同定した。
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