将来のレーザー核融合炉で用いられる均一な厚さの燃料層を持つクライオターゲットの開発を行った。実用炉で用いられるターゲットとほぼ同じ大きさの直径6mmのガス導入管付き石英シェルをマイクロ波共振器内に置き、10Kに冷却し適量の重水素を固化した後、マイクロ波をパルス状に導入し、残留ガス中に放電をつけることにより、石英シェルの底に不均一に固化した重水素の氷の均一性を改善することに成功した。 本年度の実験で得られた重要な知見は 1)均一化に要する時定数は80秒であった。これは従来から有力と考えられてきたβ線加熱法の20分に比べて著しく短く、将来の核融合炉を運転するのに必要な三重水素のインベントリ-を大幅に低減することができることを意味している。 2)均一化に要する時定数は、マイクロ波の強度にはあまり依存せず、石英シェルを冷却する能力にかかっていることがわかった。実質的には冷却ヘリウムガスの温度を下げることが最も効果的である。 3)放電を断続的に行うことにより、初めクラックなどの散乱で不透明であった氷が透明になることが分かった。これは氷の中に発生したクラックが、氷の昇華/凝縮のサイクルを通して温度勾配の上流側に移動するためである。これは均質な燃料層を作る上で重要な結果である。
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