研究概要 |
昨年度は,2次電子放出のシミュレーションコードの開発を行った。本年度は,これを用いて,電子,水素イオン,炉心プラズマに存在する不純物重イオンなどの衝撃によって起こる種々の対向壁候補材料の2次電子放出に関する必要なデータ(2次電子放出係数,放出電子のエネルギー分布・放出角分布,放出電子個数の統計分布)を生産し,その物理過程を解明することに重点をおいた。現在までに,グラファイト,ベリリウム,マグネシウム,アルミニウム,銅,モリブデン,タングステンおよび金の2次電子放出係数を計算するとともに,高Z2(原子番号)材料ほど2次電子が高いエネルギーを持つこと,放出角分布はどの場合も余弦分布を示すことなどを明らかにした。また,実機における炉壁を想定し,表面凹凸の効果について昨年度の研究をさらに進め,本年度は,不純物付着による表面の汚染についても,表面仕事関数を変化しその効果を調べた。 対向壁表面から放出され,プラズマ中で様々に電離した不純物重イオン衝撃による2次電子放出は,イオンの価数に大きく依存する。また,この場合,本研究で主として検討したカイネティック放出機構のほか,ポテンシャル放出機構による電子放出も起こるので,このためのシミュレーションコードも開発し,2次電子放出への衝撃イオンのZ_1(原子番号)および価数の効果について検討した。 プラズマの熱的・粒子的負荷を集中して受けるダイバータ板のような対向壁は,磁力線に沿って運動するプラズマ粒子をできるだけ広い面積で受けるように,磁力線に対して斜めに配置する。従って,固体表面から放出された2次電子は,シース電界による加速に反して,磁場から受けるローレンツ力によって固体表面へ引き戻される現象が起こることが予想される。このような現象を詳細に解析するために,2次電子放出だけでなく,シース内の放出電子の輸送過程をも考慮した複合的シミュレーションコードを開発し,この効果についても詳細に調べた。
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