研究の内容は、二つに分類できる。 (1)土壌中の水分の挙動 不飽和浸透流理論を実流域に適用するに当たって問題となる浸透層の下端面の境界条件を検討した。試験地に埋設したテンシオメータにより土層の深度方向のサクションを測定した。また、タンクモデル、エントロピー法を用いて、実測降雨量を有効雨量と損失雨量に分離する手法を確立し、不飽和浸透流理論を用いる際の、浸透層下端の境界条件として、サクションをほぼ-110cmにすると試験地における実測値およびタンクモデル、エントロピー法の結果と一致することを確かめた。 (2)土壌中における農薬の挙動 今年度は、農薬の流出解析に重心を置いて、流出解析では降雨時に斜面末端から水が流出しているにもかかわらず農薬が流出しない原因について探求した。土壌中の空隙率の深さ方向変化を想定した流出モデルを提案し、農薬の性質が土壌からの流出にどの程度影響を及ぼすかを検討した。その結果、農薬の流出は、空隙率の分布に大きく影響されることがわかった。また、土壌からの農薬の流出は、土壌に対する農薬の吸着のヘンリー係数と降雨強度に影響されることが確認された。
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