1995年5月から10月の間に、琵琶湖・余呉湖及び三方五湖の計15地点において、コンクリート板を設置して約2ヵ月後にこれに付着するユスリカ幼虫を採集する作業を2回繰り返し、採集した幼虫を実験室内で飼育して羽化してくる成虫を同定するとともに、採集地点にて採取した検水の電気伝導度、PO_4-P濃度及びクロロフィル濃度を調べた。その結果、6種のPolypedilum属ユスリカが記録され、Polypedilum cultellatum→P.nubeculosum→P.japonicum→P.nubiferにいたる出現種のスペクトラムを作成することができた。 一方、Hb遺伝子のクローニングについては、Polypedilum属を構成する4群のそれぞれ別の群に属する4種のうち、P.nubiferについてはMonomer第5成分(PNfL-MV)の遺伝子クローニングに成功し、PNfL-MVのグロビン鎖cDNAは755bpからなり、15残基のシグナルペプチドを含む161のアミノ酸をコードしていることがわかった。P.nubeculosumについてはcDNAライブラリーを作成するとともに、PNfL-MVに対応する成分を精製し、N末端22残基を決定した。この2種間の対応する成分のN末端配列の比較では、22positionsのalignmentのうち同一のアミノ酸が見られたのはわずか5positionsのみであり、種特異性が高い遺伝子診断に有効な配列が存在する可能性が示唆された。P.japonicumについても、対応する成分は既に精製されており、現在N末端配列を決定中である。P.cultellatumについては、虫体中のHb量が上述の3種に比べてかなり少ないため、対応する成分の精製には大量の幼虫が必要であり、現在材料を集めているところである。
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