研究概要 |
富栄養化段階に対応したpolypedilum属出現種スペクトラムの作成に関しては、本年度は、6年度及び7年度に得られたデータのまとめ及び解析を行った。その結果、河川の早瀬からは24種が出現し、富栄養化が進行するに従ってaviceps, pedestre等→hiroshimaense等→japonicum, surugense等→tamaharaki等→convictum→paraviceps等→okigrandisのような出現種の遷移が起こると推定された。また、河川の淵からは10種が記録され、tamahosohige等→asakawaense等→togaexpansum等→nubeculosum等のような富栄養化段階に対応したスペクトラムが推定された。一方、湖では、masudai等→cultellatum等→nubiferのようなスペクトラムが推定された。 一方、Polypedilum属種特異的Hb遺伝子塩基配列の検索については、平成7年度に本属の4群のうちのnubifer群のnubuferのHb(PNf-MV)の遺伝子クローニングに成功していたので、本年度はそれぞれ他の3群に属するcultellatum, japonicum及びnubeculosumのPNf-MVに対応する成分の遺伝子クローニングを試みたが何れも成功には至らなかった。そのため、PNf-MVの推定されるグロビン鎖アミノ酸配列を既に報告されているヨーロッパ産Chironomus thummi thummi (CTT)のHb1 2成分のそれと比較したところ、N末端及びC末端に近い部分に比較的長いよく保存された領域があることがわかった。そこで、この2つの領域のアミノ酸配列に対応するdegenerative primersを作成し、各種幼虫から調製したtotal RNAを鋳型としたRT-PCRを行ったところ、目的の86アミノ酸残基に相当する約260bpのDNA断片が増幅された。現在、これらの塩基配列を決定し、種の同定に利用できる種特異的塩基配列を検索しているところである。
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