本年度は、高比活性RI標識タンパク質を用い、海洋細菌による高分子溶存有機物の分解活性を高感度に測定する新しい手法の開発、及び、再現性の高い分解測定実験システムの構築を最大の目標として研究を行った。その結果、以下の成果が得られた。 1。還元的メチル化法により、牛血清アルブミン(BSA)を、高比活性に標識することに成功した。 2。調整したタンパク質標品を粒子経の異なるラテックス・ビーズに吸着させ、それをトレーサーとして用いることにより、細菌による高分子溶存有機物の分解速度を測定する新しい方法を開発することに成功した。 3。以上の方法を、培養細菌集団に応用した結果、タンパク質の分解性が微粒子への吸着とともに著しく低減するという新しい知見を得た。また、結果を細菌とコロイドの衝突確率を予測する物理モデルと比較したところ整合性があった。この知見は、海洋における溶存有機物の回転率の変動を理解する上できわめて重要な意義を持つ。 4。現場の細菌群衆の分解活性を測定する予備実験を行った結果、本法が、自然水域の高分子溶存有機物の分解活性の測定に充分応用可能な精度を持つことが示された。 なお、購入した備品は、タンパク質の高感度定量分析のために活用した。
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