:濃尾平野-伊勢湾域における大気汚染物質の動態を明らかにするべく、以下のことを行った。当該地域において大規模な観測が行われた1992年11月24日〜25日を対象に、 (1)一時間ごとの三次元流れ場を観測風を用いた客観解析によって推定した。領域内にパイロットバルーンによる上層風観測点が6点、レ-ウィンゾンデによる風および気温の鉛直分布観測点が1点、ドップラーソーダによる地上500m程度までの平均風および乱れの測定点が1点、3県の地上風、気温の観測点が合わせて100点程度あり、これらのデータを客観解析への入力として使用した。 (2)申請者らが、かねてメソスケール気象モデル用に開発し、テストして来たk-ε乱流モデルの一次元版モデルにより各観測点における拡散係数の鉛直分布を推定した。ドップラーソーダデータとの比較の結果、1次元モデルでほぼ満足すべき結果が得られるが海風の強まるような状況では乱れの移流効果を考慮すべきであることが明らかとなった。 (3)排出源データベースを1km×1kmの格子網上で作成した。 (4)申請者らの汚染質の輸送・反応・沈着モデルを用いて、24、25の両日を含む三日間の予備的数値シュミレーションを行った。 ほぼ予定通りに研究が進行し、濃尾平野-伊勢湾域の秋季の高気圧支配下での汚染物質の動態が明らかになりつつある。例えば、夜間から早朝にかけて、周囲の山岳部から冷気が流出し、濃尾平野では200m程度の厚みを持つ層を形成すること、その層は地表から排出される汚染質を多く含み、伊勢湾上に流出し、さらに相対的に暖かい伊勢湾上では弱い対流層ができて、300mぐらいの厚みを持つ高濃度層として停滞すること、などが明らかになった。しかしながら、予定した本格的な汚染質輸送・反応シュミレーションには至らず予備的段階にとどまり、平成7年度の課題となっている。
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