平成6年度(初年度)は予定通り室内実験と野外実験とを実施した。室内実験では、桜島の噴火による火山灰をいろいろな条件の海水を接触させ、海水中のATP濃度を指標にして生物量の変化を調べた。野外実験では、鹿児島湾の定点でスキューバダイビングによりマリンスノ-を観察・採集し、その特徴を調べ降灰との関係について考察した。以下に研究成果を簡単に述べる。 1.自然海水と火山灰とを実験的に接触させると、海水中の微小生物濃度が減少する。これは火山灰の表面に微小生物が吸着し、火山灰と共に沈降するからであると思われる。 2.スキューバダイビングによる観察で、鹿児島湾のマリンスノ-は降灰の直後に特に多いことが明らかになった。これはマリンスノ-の生成に火山灰が関与していることを示すものである。 3.顕微鏡観察によると、鹿児島湾のマリンスノ-は火山ガラスを主成分とする火山灰を多く含むことが明らかになった。 4.マリンスノ-のサイズが大きくなればなるほど、マリンスノ-に含まれるATP量が大きくなる、すなわちマリンスノ-は海水中の微小生物を吸着していることがわかた。 5.鹿児島湾の火山灰を含むマリンスノ-の海水中の沈降速度は、火山灰を含まない他の海域で得られたものよりも大きいことがわかった。これは火山灰を含むマリンスノ-が物質を海底に向かって急速に運んでいることを示すものであり、したがって海水中の物質循環の速度に影響を与えることを示唆している。
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