本研究では、将来廃プラスチックがエネルギー(熱や電気)として回収されるであろうことを予測し、プラスチックの焼却による問題点の一つである燃焼灰として排出される固形残留物に含まれている有害金属元素の溶出状況を純水(埋立地への投棄を想定)、塩水(海水中への投棄を想定)、酸溶液(酸性雨を想定)の3種類の仮想環境を設定して調べた。実験対象としたプラスチック試料は、電気製品の外枠や自動車部品として使用されているプラスチック、板、管やシートなどの建築材料として使用されているPVCプラスチック、飲用容器、食品用トレー、袋などの日用品類など23種類である。得られた研究結果を以下に列挙する。 1.全体的にみて、純水と塩水での金属溶出量の差はあまりみられなかった。また酸による溶出は純水や塩水による溶出より大きかった。したがって環境中に投棄されたプラスチック燃焼灰中の金属元素は酸性雨による溶出が大きいことが予想される。 2.電気製品等に使用されているプラスチックの燃焼灰においては、難燃剤として添加されているSdと顔料として添加されているCdの溶出がもっとも問題になるものと考えられる。SbおよびCdの使用を規制することが求められる。 2.建築材として使用されているPVCの燃焼灰については、Pb以外の有害金属元素はほとんど溶出していなかった。安定剤としてのPb使用はできるだけ抑制することが望ましい。 3.食品包装等日常的に使用されているプラスチックの燃焼灰からは、有害金属元素の溶出はほとんどなかった。 電気製品に使用されている基板類からは多くの有害金属元素が溶出した。基板類の回収が望ましい。 5.オ-ディオテープ類の燃焼灰からも有害金属元素の溶出が認められた。
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