平成6年度は、1)酸に対する土壌の生物的緩衝能を土壌カラム法によって評価できるか否か、および2)培地pHの変化に及ぼす植物種の影響を検討した。 1.土壌カラム法の検討:試験植物として酸に対して比較的強いオオムギを、またモデル土壌として緩衝能のほとんどない川砂を用いて、希硝酸と希硫酸(pH4.0〜2.5)を通液し、以下の結果を得た。(1)pH4.0〜3.5の酸を与えた場合には無植物区に比べて植物栽培区ではカラム流出液のpH低下が遅れ、植物の酸緩衝能が確認できたが、pH3.0では差がわずかであり、2.5で枯死した。(2)硝酸(pH4.0〜3.5)負荷区における植物による緩衝能は土壌に換算して5cmol(+)kg^<-1>であり、同濃度の硫酸負荷区の2倍であった。(3)植栽区では硝酸イオンの消滅が特徴的であったが、緩衝能と直接対応するのはアルカリ度(重炭酸イオン)であった。それゆえ、(1)現実にありうるレベルの酸性度に対してのみ植物の酸緩衝能が働く、(2)植物による酸緩衝能は養水分吸収による直接的な影響よりも植物の呼吸に伴うCo_2または重炭酸イオンの放出によってもたらされると考えた。 2.培地pHの変化に及ぼす植物種の影響:培養液pHの連続測定システムを構築し、各種植物の水耕栽培におけるpH変化過程を詳細に追跡した。その結果、オオムギやイタドリでは培地pHを低下させ、特に昼(明期)に低下速度が大きいこと、コマツナやオオバコではその逆であることなどが明らかになった。 今後、実際の土壌を用いた生物的緩衝能の評価と、緩衝能の植物種による違いを検討していく。
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