今年度は広島原爆の黒い雨の降雨域、および原爆の影響を受けていない京都府に生育したカキについて年輪中の元素の分布と放射能を測定した。 京都府産カキのγ線測定から^<137>Csと^<40>Kを定量した。^<40>Kの樹幹内における分布は、形成層より髄の方向に年輪数で約30年減少した後一定の値となり、後で述べる放射化分析の結果と良く一致した。^<137>Csはバラツキはあるが全領域で一定となり、同族元素であるKと異なる分布を示した。^<137>Csが核分裂で生成する以前に生育したと推定される年輪全域に分布していることから、^<137>Csが樹幹内を移動することがわかった。 原爆の影響を受けたカキについて^<90>Srの測定をしたところ、^<90>Sr/Srは生育年を遡るとともに増大した。この結果から、長崎産のスギでみられたような原爆のフォールアウトを、大気圏内核実験のフォールアウトとから分離して検出することはできなかった。 放射化分析法で京都産カキ樹幹中の17元素について年輪の半径方向の濃度分布を求めた。Naは形成層より約30年濃度が増加した後、徐々に減少した。RbおよびCaについてはバラツキはあるが大きな変動はなかった。したがって、Kを含め、アルカリ金属元素間で相関はみられなかった。元素濃度の変動を生じる位置からカキの辺材年輪数を約30年と推定した。 PIXE分析法を用いて放射化分析法で測定できなかった元素CuやSrを測定することができた。 原爆の影響を受けたスギ試料についても測定を進めており、今後、樹木年輪を環境指標とする方法の確立をめざす。
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