1.原爆の黒い雨の降雨域である長崎市に生育したスギ年輪中の^<90Sr>、^<137Cs>を測定し、生育年輪に沿った放射方向の分布を得た。^<90Sr>/Srの比は生育年を遡るとともに減少した後、1924-1925年輪に長崎原爆の影響と思われるピークが現れた。本年輪分析法を用いれば、大気圏内核実験によるフォールアウトとから原爆のフォールアウトを分けて検出できることが分かった。 2.原爆の影響を受けていない和歌山に生育したスギ年輪中の^<90Sr>、^<137Cs>を測定した。栄養元素でありCs取り込み元と考えられるKとの比^<137>Cs/K(Bq/g)をとると^<137Cs>の分布は、年輪間で差がほとんど見られなかった。^<137Cs>の分析によって、核実験により生じたフォールアウトと原爆のフォールアウトを区別できないことが分かった。 3.広島原爆の影響を受けたカキの^<90Sr>を分析し年輪に沿った分布を得た。^<90Sr>/Srは生育年を遡るとともに増大し、大気圏内核実験のフォールアウトと区別できなかった。 4.原爆の影響を受けていない京都府に生育したカキ樹幹中の17元素を放射化分析で定量し、年輪方向の分布を得た。アルカリ金属元素間で相関のないことが分かった。 5.PIXE分析法を用いて、カキ樹木年輪表面の分析を試み、非破壊で年輪に沿て元素分析のできることが分かった。 6.広島原爆の影響を受けたスギについても測定を進めており、今後樹木年輪を環境指標とする方法の確立をめざす。
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