研究の最終年度である平成7年度は、ニューラルネットワークによる環境因子評価手法の確立を目指して、曖昧性を伴うデータも含めたネットワークの認識精度の向上を図るとともに、個々の環境因子が環境にどの様なインパクトを与えるのかを感度解析で明らかにした。対象は、宮城県沿岸域において行われたアワビの生息環境調査データと東京湾での干潟環境調査データとした。まず、ニューラルネットワークを用いて上記の2カ所の環境データをもとに評価モデルを構築した。このとき種々のネットワークで検討した結果、比較的簡単な形態のネットワークが精度が良くなることが分かった。さらに認識率が最も高くなるネットワークに対して、感度解析を行った。これは、特定の要因だけをネットワークのなかで変化させて、ネットワークの出力がどのように変化するかを見るものである。その結果、感度解析によって、個々の要因が生態系環境に及ぼす影響が明らかになること、特に環境変化が急激に起こる、いわゆる限界点を定量的に特定できることが明らかとなった。また感度解析の結果と専門家が判定した結果とは、きわめてよく一致することがわかった。以上の2カ年の研究から、ニューラルネットワークは、生態系環境問題に代表されるような現象の因果関係を特定づけることが困難な問題にきわめて柔軟に適用できること、またネットワークの特性をうまく与えることで認識率の高いネットワークを構築することが可能であることがわかった。また、ネットワークを利用した感度解析を利用して、個々の要因と結果との関係を定量的に明らかにすることができることがわかった。
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