ラット脳から酵素処理により単離した神経細胞と胸腺から分離した胸腺細胞に蛍光プローブを連用して、細胞集団レベルではフローサイトメーターにて、単一細胞レベルではレーザー共焦点顕微鏡・画像解析装置で細胞から得られる蛍光を測定し、その蛍光から細胞機能、細胞内動態を測定した。この方法を用いて有機金属化合物の細胞に対する影響を評価した。サイトグラム上の細胞集団を解析すると、トリブチル錫およびイオノマイシン処理により、トリブチル錫処理群ではethidiumに染まった細胞集団が増加しているが、イオノマイシン処理群ではethidium蛍光とfluo-3蛍光の両方を呈して中間の位置に細胞集団ができている。トリブチル錫により細胞内Caイオン濃度上昇に伴い、細胞生存率は低下していった。細胞内Caイオン濃度上昇と細胞生存率の低下は相関が有るように考えられるが、イオノマイシン処理群ではfluo-3蛍光増強(すなわち、細胞内Caイオン濃度上昇)はより著しいにも関わらず、生存率は逆にトリブチル錫処理群よりも高い。よって、トリブチル錫による細胞死への細胞内Caイオン濃度の関与を検討する目的で、細胞外Caイオン濃度を変化させた状態でトリブチル錫の作用を検討した。細胞外Caイオン濃度上昇に伴い、トリブチル錫処理群では細胞内Caイオン濃度上昇と細胞生存率んぼ低下は起こるが、Ca-freeの状態でも細胞死は起こっており、トリブチル錫による細胞死が必ずしも細胞内Caイオン濃度には依存しない事が示されたさらに、胸腺細胞はトリブチル錫に中枢神経細胞よりも影響を受けない事が解り、細胞レベルでも作用に差異が観察された。メチル水銀でも同様に評価できた。
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